もとくらし

道を歩いていたら、アジア系の観光客らしき人達が数人やってきて「すみません、東京タワーはどこですか」と尋ねてきた。しかしその場所は東京タワーの本当にすぐそばだったので、逆にこちらの方が吃驚してしまった。

え、こんなに近くなのに、と思わずそれがあるはずの後ろを振り返ってしまったくらいだ。しかしそこにはちょうどビルが建っていて、うまい具合に東京タワーが全く見えない位置になっていたことに気がついた。ああ、でもほんの少し離れれば、例えばすぐそこの交叉点を渡ったところで後ろを向けば、夜空のなか綺麗にライトアップされた東京タワーがでかでかと聳え立っているのが分かるのに。(そこでは時々、立ち止まって携帯電話のカメラで撮影している人を見かけるほどだ)

ともかく「あ、こっちを真っ直ぐ行けばあります」と伝えてその場を去ったのだが、彼等が東京タワーの見えるところまで進んだときに、その思いがけない近さに(そしてライトアップされた東京タワーそのものに)驚くであろうことを想像すると、一緒について行ってそのさまを見てみたくもあったのだった。

それにしてもこの状況は何と言い表せばよいものか。「燈台下暗し」? 「木を見て森を見ず」? ちょっと違うような……うまい言葉が見つからず。