ドをつけてみよう

孫引用*1になりますが、司馬遼太郎著『街道をゆく 22』にはこのような記述があるそうです。

貴族の場合、領地の地名をもって姓とする。日本でも、鎌倉期ぐらいまでの武士の苗字は、その家が領している地名をとった。(中略)熊谷ノ次郎、比企ノ能員、畠山ノ重忠……といったふうである。この鎌倉までの名乗りの「ノ」が、スペインやフランスの貴族のしるしである de, ドイツの von にあたる。

*1 樋口政則著『江戸のかな』(名著出版)より

成る程、「ノ」が「ド」にあたるのか。言われてみれば確かに。してみると日本史上の人物名をフランス語風に言えば、

となるわけだから、今後こういった人物を海外に紹介する場合には上記のように訳するべきでは! とひとり盛り上がってはみるものの、日本でだって Marquis de Sade を「サドのマルキ」とか言わないじゃないか、と言われるとその案も引っ込めざるを得ないわけで。

あ、ドのつく外国人名で真っ先にサド侯爵の名が思い浮かんだことについては、単に自分の知識不足に起因するものであり、趣味嗜好等には一切関わり無いことをここに注記するものであります。どうか誤解無きよう。

でも「サドのマルキ」って妙に日本語に合いそうな気も。「佐渡の丸木」とか。

(2000年6月6日)

北村曉 kits@akatsukinishisu.net